患者さまの笑顔が見たい!PSA(看護補助者)
満足にできなかった親孝行。
患者さまに尽くすことが、せめてもの恩返し。
今回はPSAという病棟の看護補助のお仕事について詳しく教えていただくため、PSA歴10年目の伊東さんにお話を伺いました。今でも悔いに残る家族との別れ。せめて、今、目の前にいる患者さまには自分にできる精一杯で尽くしたい。
伊東さんのお話から見えてくるPSAという仕事の魅力。将来の選択肢の一つとして、PSAというお仕事も検討してみませんか?
患者さまへのケアを通してようやく実現した、自分の家族にできなかった恩返し
きっかけは、父と祖母との別れでした。
私は10歳の時に、母をがんで亡くしています。当時はまだ子どもだったこともあり、母の病状について詳しく知らされることはなく、「元気になって帰ってくる」と信じていました。しかし、母は病院へ行ったまま帰ってくることはありませんでした。
その後は祖母に育てられましたが、病気と向き合う母に何もしてあげられなかったことを、ずっと悔やんでいました。
結婚し、3人の子どもに恵まれた頃には、育ててくれた祖母が急逝しました。さらに2年後には、父も白血病(はっけつびょう)で亡くなり、相次いで大切な家族を失いました。
「あれでよかったのか」「もっと何かしてあげられたのではないか」。そんな後悔ばかりが残り、自分を育ててくれた家族へ十分な恩返しができなかったことは、今でも心に残っています。
そこでPSAとして働くスタッフの姿を見て、「私が本当にやりたかった仕事はこれだ」と感じたんです。
病気と向き合う患者さまを支える仕事を通して、自分ができなかった恩返しをしたい。そう決意し、PSAの道を選びました。
病室の清掃業務では、患者さまと深くお話ししたり、身体介助をしたりすることは基本的にありませんでした。
私はそのことが、とてももどかしく感じていました。もっと患者さまと話したい、触れ合いたい、そしてお役に立ちたいという思いが強かったからです。
一方で、PSAは患者さまとたくさん会話をし、日常生活の介助を通して深く関わることができる仕事だと知り、「まさに自分がやりたかった仕事だ」と感じました。そこで、自ら志願して採用試験を受けました。
私がPSAという仕事に惹かれている理由の一つは、「人に安楽を与えられる仕事」だということです。
温かいタオルで患者さまの体を拭いた時にいただく「気持ちいい」という言葉や、何日ぶりかに洗髪をした時の「さっぱりした」という言葉。
そうした患者さまの心からの素直な一言が、私にとって大きなモチベーションであり、この仕事のやりがいになっています。
試験を受けた時は、正直なところ受かるとは思っていませんでした。
それまでは事務職として働いていた期間が長く、41歳という年齢でもあり、病院勤務や夜勤も未経験でした。身体的な面も含めて、「自分は採用してもらえるのだろうか」と不安に思っていました。
それでも、無事に採用していただくことができ、本当に嬉しかったことを今でも覚えています(笑)。
私のように医療の知識がない状態で入職した人でも、一つひとつの業務について学べる研修が用意されているため、安心して仕事を覚えることができました。
新入職者向けの基礎的な研修だけでなく、毎年度初めには研修一覧が案内され、自分が興味のある研修へ参加することもできます。
研修にはさまざまな職種のスタッフが参加するため、新しい学びや交流があり、とても楽しい時間になっています。
どうしても辛い時には、勤務中でも相談して診察を受けさせてもらえるなど、安心して働ける環境が整っていると感じています。
今、私がこの患者さまのためにできることは何か
患者さまの笑顔が見たい!
患者さまとの関わりで一番大切にしているのは、患者さまと一緒に笑うことです(笑)。
病室へ伺うと、カーテンを閉めた部屋で一人静かに過ごされ、うつむいている患者さまも少なくありません。
突然病気が分かり、慣れない病院での生活や治療、思うように進まないリハビリに、不安や落ち込みを感じるのは当然のことだと思います。
だからこそ、私はケアの予定がなくても患者さまのお部屋へ伺い、何気ない会話をしたり、お話を聞いたりするようにしています。
そうすると笑顔を見せてくださったり、「また来てね」と声をかけていただけたりします。
患者さまが少しでも安心した表情を見せてくださる瞬間が、私にとって何より嬉しい時間です。
何か少しでも気持ちが明るくなるきっかけになればと思い、自宅で飼っているヤギの動画をお見せしたところ、「ヤギだー!」と、とても嬉しそうな表情を見せてくださいました。
その後は担当の緩和ケアの医師や病棟の看護師に許可をいただき、自宅で撮影したヤギやネコの動画を何度かお見せしました。
患者さまがとても喜んでくださった姿を見て、私自身も本当に嬉しかったことを今でもよく覚えています。
人にしたことはいつか自分に還ってくる。
「自分自身や身内が安心して入院できる病院」づくりに貢献したい
全くの未経験で入職した私も、10年の経験を積み、今では新人PSAや新人看護師、看護学生のアルバイトへ、病棟業務や患者さまとの関わり方、コミュニケーションの取り方などを伝える機会が増えてきました。
私がいつも大切にしているのは、「いつかは自分がお世話になる立場になる」という気持ちです。
今一緒に働いている若いスタッフの皆さんに、いつか私がお世話になる日が来るかもしれません。
だからこそ、今自分が持っている知識や経験、これまで感じてきたことを、できるだけ多く伝えていきたいと思っています。
今、自分が相手に渡したものは、いつか自分に返ってくる。そんな思いを大切にしながら、日々仕事に取り組んでいます。
これからも、患者さまが安心して入院生活を送れる環境づくりに貢献できるよう、さらに知識や経験を積み重ねていきたいと思っています。
介護福祉士の資格も取得し、最近ではコロナ病棟の専任を任せていただくなど、新しい知識や経験を学ぶ機会にも恵まれてきました。
これからも、その経験を生かしながら、「亀田なら、自分の大切な家族を安心して入院させられる病院」と胸を張って言い続けられるよう、患者さま一人ひとりに寄り添い、志を持って仕事に取り組んでいきたいと思っています。