感染症内科フェローシッププログラム(後期研修修了者以上)

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プログラム詳細

1.プログラム紹介と教育ポリシー

このプログラムは、内科の一分野としての臓器横断的な感染症内科を担う人材を養成することを目的とし、2004年に開設されたプログラムである。本プログラムが目指す感染症内科とは、微生物が起こす疾患を、臓器に限らず、微生物の種類に限らず、すべて診療対象とすることを特徴とする。日本においてはまだこのスタイルで感染症診療を行う“感染症内科”は少ない。
現代の感染症診療においては、AMR(耐性菌)の問題は逼迫しており、感染症患者の診療においては耐性菌を増やさない抗微生物薬の使用法を適切に行うことが求められている。そのためには微生物を意識した的確な診断と専門性の高い抗微生物薬の使用法が求められる。特殊な耐性菌、特殊な病態も含め微生物と抗微生物薬に関する高度な専門知識と経験が必要となるが、すべての医師がそのような専門知識を身につけることは現実的ではない。そのため、感染症内科が併診することで責任を分担し、感染症診療に関する専門知識が必要な部分の診療を提供することで、本来の医学的問題を診療する専門家の負担を軽減することが可能となる。さらに感染症内科の診療により患者の予後を改善し、耐性菌の出現を抑制することをも目的とする。そのような役割を担う感染症の専門家を養成することを目的とし、当プログラムの修了後は、感染症の専門家として独立した感染症内科として機能する実力を身につけることを目標とする。また、同時に同様の感染症専門家を育てることが出来る能力を身につけることを目的としており、卒業後は感染症専門家を育成する指導医としての役割を果たすことが出来る人材を養成することを目標とする。
上記の目標を達成するため、募集する人材については、内科一般が既に履修されていることが望ましく、後期研修修了レベルの人材を対象とする。初期研修修了直後の場合は感染症・総合内科コンバインドプログラムへの応募で対応する。

2.プログラム年数

3年間

3.取得可能な専門医資格

日本感染症学会感染症専門医

4.研修施設

4-1 基幹研修施設

亀田総合病院・亀田クリニック

4-2 関連研修施設

亀田京橋クリニック・成田赤十字病院

5.指導体制

5-1 指導責任者

細川 直登

5-1 指導医

細川 直登 部長 日本感染症学会 感染症専門医・指導医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医
大澤 良介 部長 日本感染症学会 感染症専門医、米国感染症内科専門医、米国内科専門医
馳 亮太  部長 成田赤十字病院感染症科部長 日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会 総合内科専門医
蛭子 洋介 部長代理 日本感染症学会 感染症専門医、米国感染内科専門医、米国内科専門医
山本 たける 医長 日本内科学会認定医

6.プログラム概要

6-1 研修目標

総合目標
日本で臓器横断的な感染症内科を確立するために、独立して感染症内科の診療と、後進の育成ができる人材を養成することを目標とする。
そのためには以下のモジュールを設定しそれぞれについて十分な経験と知識をつけることを履修目標とする。

  • 必須モジュール
    1. 臨床微生物学
      臨床現場において専門家として必要な微生物学的判断ができる。グラム染色の教育法なども含まれる。血液培養陽性例は全例検査室から連絡を受け検査室で自ら所見を確認する。Microbiology roundとして毎週、臨床検査室との合同カンファレンスに参加し、検体が提出されてから培養、同定、感受性検査の過程を理解し、微生物検査のpitfallや通常の方法で同定できない微生物への対応などを通じ、微生物検査室とのコラボレーションを学ぶ。
    2. 抗微生物薬学
      抗微生物薬の特徴と適応を理解し、必要最小限のスペクトラムを用いることができる。感染症のプロにとって、抗微生物薬(抗菌薬)については。単に薬が処方できるというレベルではなく、「使いこなせる」応用力を身につける。第一選択薬が副作用・耐性・供給不足などの社会的状況などで使用できない場合など、マニュアル・教科書レベルでは対応できないケースについても対応できる実力をつける。
    3. 臨床感染症マネジメント
      実際の患者に感染症学の知識を適応し、診断から治療終了までの適切なマネジメントができる。微生物や抗菌薬の知識を有するだけでは不十分である。診療行為の目標・対象は患者であり、このケアこそが感染症診療の骨幹をなす。重要な問診・診察方法や診断までのプロセス、治療や予防について毎日の回診・全患者レビューを通して徹底的に学ぶ。
    4. 感染管理
      感染管理について、感染管理専門看護師(ICN)と協力し、院内及び地域の耐性菌、流行性疾患のコントロールについて適切な対応ができる。感染症診療は個別の患者を対象にした診療行為だが、感染管理は病院または地域のmassを対象とした公衆衛生学的なアプローチである。それぞれ異なる専門知識や方法論が必要である。当院では感染管理部門としての地域感染症疫学・予防センターが主体となって感染管理を行っており、フェロー3年目にはICT(Infection Contorol Team)に参加する。医師として感染管理にいかに関わるかを学ぶ。
    5. 感染症医療倫理、コミュニケーション・ストラテジー
      感染症診療における倫理、コミュニケーションの方法を身につけ、診療に応用できる。感染症診療においては、患者の利益と公衆の利益が対立することがしばしばある。結核患者を隔離すべきか、HIV患者のパートナーにはいかに告知すべきかなどはその端的な例である。実践的な、きれい事でない医療倫理感の習得と実践を学ぶ必要がある。コンサルタントである感染症のプロにとって、主治医チームと診療方針を一致させるための効果的なコミュニケーションスキルは何よりも重要なものである。アウトブレイク時のマスメディアへの対応なども、この範疇に入る。
  • 成田赤十字病院
    成田赤十字病院感染症科に8ヶ月間出向し、感染症科医師として診療を担当する。成田赤十字病院は厚生労働省から指定された、全国4ヶ所しかない特定感染症指定医療機関であり、成田空港から入ってくると想定されるあらゆる輸入感染症に対応できる体制の病院である。ここでは、定期的に行われるエボラ出血熱などを含む第1種感染症などへの対応の訓練や、日常的にマラリア、腸チフスなどを含む輸入感染症、外国人患者の診療を通して亀田総合病院では経験できない症例の経験を積む。
  • 選択モジュール
    3年間のうち3ヶ月間は海外を含め自由に研修先を選択できるエレクティブ期間を設定している。東京医科大学臨床検査医学科におけるHIV診療の研修、結核研究所主催の結核診療研修、大阪大学で募集されるタイでの熱帯医学研修への参加、ニューヨークにおける感染症診療実習、ペルーにおける熱帯医学ディプロマコース(The Grogas Diploma Course)など、多様な活動がフェローによって行われてきた。臨床微生物学を身につけるための微生物検査室での研修や、総合内科医としての病棟での診療と教育、感染管理学を習得するための地域感染症疫学・予防センターでの研修などが選択されている。

    3年間のプログラム修了後は日本感染症学会感染症専門医試験の受験資格を有する。専門医試験はそのための特別な準備をしなくても、本プログラムを履修することで日常の知識があれば合格可能であり、終了後の卒業年次に専門医試験を受験することを推奨する。受験資格として、学会発表と論文作成が求められており、3年間のプログラムの中でこれらの条件も満たしておくことを目標とする。
  • 学術活動 (アカデミックアクティビティ)
    学術活動として、3年間で学会発表3回、論文2本の学術業績を目標とする。学会報告を年1回を目標とすると良い。そのためのサポートと指導体制として月1回のリサーチミーティングのほか、各指導医がフェローを個別に担当して直接学会発表、論文作成の指導体制を構築している。

6-2 年次毎の段階的な到達目標

【1年次】
感染症コンサルタントとして必要な基本的な知識を各モジュールごとに履修する。専門的な診察手技としての問診、身体診察、検査の選択、解釈についても身につける。またコンサルタントとしての診療方法を、実際の診療場面に応じて経験を積むことで習得することを目標とする。

【2年次】
1年次に身につけた知識と技術をさらにレベルアップさせ、1年次のフェローやローテータの他科医師、研修医に感染症診療の原則についての教育を行うことができるようになることを目標とする。各モジュールごとに履修目標をクリアし、感染症専門医としての基本的な知識と技術に関しては履修完了することを目標とする。

【3年次】
1-2年次に身につけた診療に関する知識と技術とは別の専門性を有する分野として、感染管理について、地域感染症疫学・予防センターの業務に関わりながら履修する。ICNと協力して感染管理部門の運営について理解することを目標とする。また、アカデミックアクティビティーとして、臨床研究に取り組み、学会発表および論文を学術誌に掲載することを目標とする。

6-3 研修方略

以下の業務についてon the job trainingを行い研修する。

  1. 他科からのコンサルテーション
  2. 血液培養陽性例のフォローアップ
  3. HIV、結核等の感染症内科での入院患者のマネジメント
  4. 一般内科・感染症内科の外来診療(HIV外来診療を含む)
  5. 感染管理(ICT、針刺し対応など)
  6. 研修医への教育
  7. 亀田京橋クリニックでのトラベル・ワクチン外来
  8. 成田赤十字病院での特定感染症指定病院での感染症診療

カンファレンス

  1. Microbiology round:木曜日14:00-15:00
  2. Journal ClubまたはCase conference:金曜日 14:00-15:00
  3. 抗菌薬適性使用支援チームミーティング KAST(Kameda Antimicrobial Stewardship Team): 水曜日 14:30-15:30
  4. HIVカンファレンス(A-kara):2ヶ月に一回
  5. City Wide Conference 亀田総合病院、聖路加国際病院、東京医科歯科大学の合同カンファレンス:月1回
  6. 亀田感染症レクチャー(KAMETEN):年1回12月講演者としても参加する
  7. MADカンファレンス(Multicenter ADvanced conference)静岡県立がんセンター感染症内科 主催の感染症専門家向けカンファレンス:月1回
  8. TIC (Tokyo Infection Conference)都内の他施設合同の医師と検査技師のための感染症カンファレンス:年3回

7.研修修了者の専門医取得状況

2006-2023年 30名
2023年入職のフェローが20期生である。

8.直近の研修修了後の進路

2019年 神戸市医療センター中央市民病院 感染症科
2019年 熊本赤十字病院 内科
2019年 成田赤十字病院 感染症科
2020年 市立大町総合病院 感染症内科
2020年 奈良県立医科大学 感染症内科
2020年 帝京大学ちば総合医療センター
2021年 手稲渓仁会病院 感染症科
2021年 金沢大学医学部 リウマチ膠原病内科
2021年 成田赤十字病院 感染症科
2022年 虎の門病院 感染症内科
2022年 松山赤十字病院 総合内科
2022年 亀田総合病院 感染症内科