脳神経内科専門研修
定員:若干名
プログラム基本情報
脳神経内科は内科のsubspecialityではなく、本来は内科や外科、小児科、そして近縁の精神科や脳外科と並ぶ基本領域であり、総合神経学、脳卒中学、運動疾患学、てんかん学、神経変性疾患学、神経免疫学、痴呆・高次脳機能学、末梢神経学、筋肉病学、自律神経学などを包含しています。当科には40-50床の入院患者があり、外来の3-4室を担当しており、忙しい中で多様な症例に出会えます。最高の教師は患者さん自身であり、当科には予断なく病歴を取り、考えて診察し、検査計画を立て、治療と平行しながらことを進めていく本来の医療があります。また嚥下障害や呼吸不全などの全身管理も学べます。さらにリハビリスタッフやSWなどとともに社会医療の側面を学べます。教育面では、得意分野を持つ専門医が7名おり、回診や各種カンファレンス、院内や県内の研究会など学ぶ機会は十分にあります。研修後には神経内科専門医はもちろん、脳卒中、頭痛、神経生理などの専門医の道が開かれており、進路として当科スタッフ、海外留学、大学での研究など多くの方向性があり、さらにリハビリ担当医、神経生理検査医、外来専従医を含め、出産・育児にあたる女性医師にも働きやすい分野が多いです。
指導医からのメッセージ
脳神経内科は「疾患」だけでなく「疾患をもつ人」に出会える働き甲斐と将来性のある分野だ
脳神経内科プログラム責任者 福武 敏夫
現代の医療は細分化され、臓器しか見ない医師が増えている。すなわち、患者の表情や心ではなく、血液検査結果や画像所見だけに捉われている。神経疾患は治らないと「けなされて」久しいが、それは主に運動障害が「目に見える」ことからきている(実は「治る」疾患も増えているのだが)。内臓の奥で進む「目に見えない」重度の心筋症や腎障害、肺気腫や肝硬変も同様に治らないのだ。iPS研究や遺伝学の進歩はこれらの治らない疾患に光明をもたらすだろう。ただ、医療の現実はそのような高速道路・新幹線の建設だけでは済まないひどい交通渋滞の中にある。当科ではその渋滞をきちんと整理できる医師を育てたいし、そこからモチベーションを得て研究に進む医師を支えたい。
<参考図書>
・福武敏夫:「神経症状の診かた・考えかた-General Neurologyのすすめ」(医学書院、2014)
・福武敏夫:「脊髄臨床神経学ノート-脊髄から脳へ-」(三輪書店、2014)
・平山惠造監修、小島重幸・福武敏夫・北 耕平:「カラーイラストで学ぶ神経症候学」(文光堂、2015)
プログラム詳細
当科プログラムの特徴
- 千葉県南部最大の基幹医療センター(925床の総合病院+独立型クリニック+56床の回復期リハ病院)であり、症例が集中し(年間入院約600-700人、うち脳卒中約400例)、多彩で豊富(ベッドサイドこそ研修医の修練の場であるが、それを100%満たす)。
- 脳神経内科の入院は40-50名であり、これと外来を10名前後の医師で担当し、ナース、リハビリスタッフ、栄養士などとのチーム医療を推進している。
- 疾患の対象は脳卒中急性期治療(t-PA治療含む)から免疫性神経疾患や進行期神経難病、頭痛・めまい・けいれんなどの機能性疾患まで、多彩である。
- 地域の性格から高齢者が多く、老年期医療の様々な問題点が学べる。
- 脳神経内科スタッフは7名で、すべて神経学会専門医であり、それぞれ特異分野をもっている。部長は脳卒中学会専門医と頭痛学会専門医を兼ね、当科は各専門医教育施設に認定されているので、専門医取得が比較的容易である。
- 神経関連の他科が充実し、連携が深く、ローテーションが可能(要相談):救命救急科、内科、神経放射線、脳外科、脊椎外科、小児神経、心療内科・精神科、リハビリテーション科、在宅医療部、感染症科、皮膚科など。
- 各種カンファレンスや教育セミナーが豊富:症例検討会、英文抄読会、神経画像、高次脳機能、神経病理、リハ、ジュニア勉強会、シニア勉強会、年2回の南総臨床神経学セミナー、臨時の講演会・勉強会など。
- 以上を通じて、個々の研修医の将来構想にそったキャリア形成を実現するための研修環境の確保に力を入れている。部長は諸学会の役員も任ぜられており、国内諸大学、主要市中病院との連携もスムーズになされる。
プログラム年数とその概要
3年、または1年
3年コース
神経学会専門医取得を目標とするコース。うち1~2ヶ月は国内(海外)留学も可能。
1年コース
将来リハビリテーションや在宅医療、家庭医療に従事するために脳卒中や頭痛、めまい、高齢者医療などコモンディジーズへの対処能力を獲得することを目標とするコース。
その他に、希望者の経験とキャリア形成の構想に応じ、2年のプログラムも相談可能。
取得可能な専門医資格
神経学会、頭痛学会、脳卒中学会、静脈栄養学会
研修施設
亀田総合病院、亀田クリニック
関連施設
東京都長寿健康医療センター(病理)、千葉大学神経内科(神経生理)
指導体制
指導責任者
福武敏夫
指導医
福武敏夫 顧問 神経学会専門医・指導医、頭痛学会専門医・指導医、脳卒中学会専門医、内科学会認定医・指導医
安藤哲朗 部長 神経学会専門医・指導医、脳卒中学会専門医・指導医、内科学会認定医・指導医
柴山秀博 部長代理 神経学会専門医・指導医、内科学会認定医・指導医
佐藤 進 部長代理 神経学会専門医・指導医、内科学会認定医・指導医
竹内亮子 部長代理 神経学会専門医、内科学会認定医
田島和江 医長 神経学会専門医・指導医、内科学会認定医・総合内科専門医
3年コースの目標とモデルプログラム
研修目標
初期研修、後期研修を通して、当科では1人前の神経内科医(専門医)として国内のどこでも通用する医師を育てて行きたい。その目標は、多彩な神経疾患、特に脳血管障害や各種免疫性神経・筋疾患に対応できること、神経疾患に伴う様々な合併症に対応できること(高齢者医療の基本)、神経疾患、特に神経難病に悩める方々・家族と正面から向き合えること、リサーチ・マインドをもち、患者さんから学んだことを患者さんに返すために学会発表、論文執筆ができることである。神経生理学とか神経病理学とかテーマが明確である場合短期間国内ないし海外留学することも可能である。また、研修日を利用して首都圏の他施設での継続的プログラムに参加することができる。
年次毎の目標
【1年次】
- 入院患者を10-15名担当し、様々な神経内科疾患の診断、検査、治療とケア、家族・社会的問題への対処を学ぶ
- 脳神経内科外来週1回(および希望により一般内科外来週1回)を受け持つ
- 医学生の見学ないし短期実習の指導、ジュニアレジデントの指導を行う
- 神経放射線のローテーション研修を1ヶ月選択できる
- 神経伝導速度検査(簡単な症例)を習得
- 千葉県下ないし首都圏での神経内科系各種臨床研究会で症例を発表する
【2年次】
- 入院患者を10-15名担当する
- 脳神経内科外来週2回を受け持つ
- ジュニアレジデントなどの指導を行う
- 頸動脈エコーを修得
- 神経病理のローテーション研修を1ヶ月選択できる
- 神経学会関東地方会ないし関東神経病理懇親会、運動異常症学会、頭痛学会で症例を発表する
【3年次】
- 入院患者を5-10名担当する
- 脳神経内科外来週2~3回を受け持つ
- 脳神経内科シニアレジデントの指導を行う
- 国内ないし海外研修を1-2ヶ月行うことができる(要相談)
- 臨床研究を行い、日本神経学会総会ないし日本神経病理学会総会、脳卒中学会、American Academy of Neurologyなどで発表を行う
- 審査のある雑誌に症例報告や臨床論文を投稿する
なお、1年ごとに到達度を評価するが、評価は神経学会のミニマムリクワイアメントを参考に行う。
研修方略
- 病棟業務・外来診療を通じて、主治医・上級医の指導の元に、神経内科分野の病歴聴取、診察手技、検査法の選択、治療法を学ぶ。
- 毎日のグループ回診、週1回の部長回診にて適切なプレゼンテーションとディスカッションを行う。
- 主治医・上級医の指導の元に、腰椎穿刺、生理学的検査、超音波検査などに習熟する。
- 主治医・上級医の指導の元に、当直業務を通して、脳神経内科分野の救急対応・急変対応を学ぶ。
研修実績と進路
- 5年間で平均毎年2名神経学会専門医に合格(当院での研修終了後早期の取得者を含む)。
- 市中病院スタッフ、てんかん専門病院、大学院(新潟大学、京都大学、徳島大学)、リハビリ専門病院
カンファレンス
- 症例検討会(金曜日7時~):問題例について詳細に検討する。
- 英文抄読会(火曜日7時~):輪番にて文献から学ぶ。
- 神経画像(金曜日17時):神経放射線科医と一緒にMRI等の検討を行う。
- 神経病理(月1回土曜日午後):脳(脊髄)剖検例のマクロ・ミクロの検討を専門医の指導の元で行う。
- 高次脳機能(月1回土曜日午後):高次脳機能について専門家を招いて臨床カンファレンスを行う。
- リハビリ(金曜日17時45分):入院患者について、PT・OT・STの担当者およびMSW・SW、看護師と共に情報を共有し、リハビリの進め方・ゴールを相談する。担当患者のプレゼンテーションを行う。
- 在宅医療(水曜日):在宅医療部に依頼した患者について情報を共有し、適切な対処を行う。
- ジュニア勉強会、シニア勉強会:随時
- その他、年2回の南総臨床神経学セミナー、臨時の講演会・勉強会など多数。
学会活動
- 千葉県~関東圏の各種研究会に積極的に参加し、発表を行う。
- 神経学会地方会や神経病理学会地方会に定期的に交代で発表を行う。
- 神経学会学術集会など全国規模の学会に積極的に参加し、高学年では発表を心がける。
- 学会発表した内容はできるだけ論文化(特に英文)し、世界の医療水準を少しでも高めることに貢献する。