道を求めて
初期研修医
亀田初期研修プログラム
大石 樹
臣之所好者道也,進乎技矣. (臣の好む所は道なり,技に進めり.)
『荘子・養生主』に登場する庖丁(ほうてい)は、牛の解体を生業とする料理人で、骨や筋の間を滑るように刃を通し、刃こぼれすることもなく、同じ刃を数十年にわたり使い続けるほどの熟達ぶりで知られていました。
ある日、庖丁が文恵君の前で牛を捌いた際、その見事さに文恵君は感嘆し、「技術とはここまで極まるものなのか」と述べました。 すると庖丁は静かに答えます。
――「わたくしの志すところは道であって、技そのものではありません」と。
これは、私たちの身近にある「包丁」の語源の一説とも言われていますが、それ以上に、
学問とは知識や技術の修行ではなく、その背後にある“道”を涵養する営みである
という深い教訓と示唆に富んだ物語だと感じます。
当院で日々接する研修同期、上級医の諸先生方、コメディカルの皆さまは、医療に関する深い知識や真摯な姿勢を備えておられるばかりでなく、医療とは直接関係のない人生における価値観の豊かさをも体現しておられます。その佇まいからは、それぞれが歩んでこられた「道」の厚みが確かに感じられます。 そして、同じ職場にいながら多様な経験や視点が調和している様子に触れるたび、医療が単なる技術の集積ではなく、人と人とが築く“道”の営みであることを改めて実感いたします。
当院は EBM: Evidence-Based Medicine の実践における大家として知られております。しかしながら、そこで働くひとりひとりの「道」の在り方が、evidence だけでは捉えきれない部分部分の総和となって、亀田総合病院の尊い魅力を形づくっている、私はそのように確信しております。 科学的厳密性を重んじるからこそ、個々の「道」の豊かさが際立つという、この逆説的な在り方こそが当院らしさであるとも言えるでしょう。
私自身もまた、その共同体を構成する一部分として矜持を抱き、日々の研鑽のなかで技を磨きながらも、技にとどまらず“道”を志し続ける者でありたいと願っております。
そして、同じ志を胸に亀田で学ぼうとする後輩の皆さんと、ともに成長し仕事をする日を心から楽しみにしております。