がん化学療法看護認定看護師インタビュー!
もっとも印象に残っているのは、60代の女性患者さんです。娘さんが結婚を控えており、「どうしても母に結婚式へ出席してほしい」という強い希望がありました。
担当医・病棟師長と相談し、「院内のホールなら参加できるのでは」と検討を進めました。患者さんの体力面を考慮した結果、病院内のホライゾンホールで結婚式を開催する方向になり、娘さんたちが中心となって準備を進めました。
患者さんは緩和ケア・延命治療として抗がん剤治療を受けていました。結婚式当日まで少しでも良い体調を保てるよう、副作用の早期発見と対処を重視して関わりました。 症状の訴えを傾聴し、副作用に応じた追加薬の可否、安楽に過ごすための方法を説明しながら支援しました。
また、不眠の時にはリラクゼーションを、手足の浮腫(むくみ)にはマッサージ方法を娘さんと一緒に実践しました。娘さんが毎日ケアを続けたことで良いコミュニケーションが生まれ、患者さんも「気持ちよい」と話されていました。
最終的に患者さんは結婚式に出席でき、ご本人とご家族の希望が叶った症例となりました。グリーフケアの観点でも深い関わりができた事例です。
どの病棟でも均一で質の高いがん化学療法看護を提供できるよう、院内でがん化学療法ワーキングを立ち上げ、看護師・医師・薬剤師が協働しています。
ワーキングでは、副作用説明パンフレット「がん化学療法を受けられる方へ」の作成・改訂や、病棟での課題共有、症例検討、看護手順の標準化などを推進しています。
院内には多くの患者さんが抗がん剤治療を受けています。そのため、どの病棟・外来にいても困らない体制づくり、つまり組織化されたチーム医療が重要だと考えています。
特に、看護師の安全を守る曝露予防対策(ばくろよぼう:抗がん剤に触れるリスクから職員を守る対策)は必須であり、研修や標準手順の整備に力を入れています。チームで取り組むことで、抗がん剤曝露の低減につながっています。
まず「患者さんがなぜ今、私の支援を必要としているのか」を明確に理解し、その理由と背景を踏まえて関わることを大切にしています。
ケアがうまくいかない患者さんの場合、多くは「疑問や不安が十分に解消されていない」ことが根底にあります。真摯に話を聴き、なぜ実施が難しいのかを一緒に整理し、ご本人が納得できる理由と対処法を明確に説明します。
こうした対応は、患者さんのセルフケア能力向上につながるため、特に重視しています。
がんゲノム医療コーディネーターとしても活動しています。がんゲノム医療とは、患者さんの遺伝子情報をもとに最適な治療法を検討する医療で、最先端の知識と説明力が求められます。
新しい治療に結びつく可能性があるため、患者さんが理解しやすい説明の工夫や、最新医学のアップデートは欠かせません。がん化学療法看護の専門性とあわせて、より良い治療選択の支援に努めています。
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