腫瘍内科専門研修

定員:若干名

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プログラム詳細

診療科の紹介

腫瘍内科は、全てのがんの診療をする内科系専門科です。米国では50年以上の歴史があり、内科系専門科としては最大規模です。日本では歴史は浅く黎明期ですが、亀田総合病院では日本で先駆け、米国式の本格的な腫瘍内科診療を2006年から開始し、2007年から臨床研修も開始しました。いままで11期の卒業生を輩出し、卒業生の日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の合格率は100%です。この度第13期生の募集を開始します。

日本では原発臓器毎に担当する専門科が異なりますが、米国では悪性腫瘍はその種類にかかわらず、全て腫瘍内科が担当します。そして外科手術以外の治療を行います。亀田総合病院の腫瘍内科でも米国と同様に全てのがん種を担当します。多くは外科系各科、内科系各科、総合内科、救急部から相談を受けたり、直接外部の施設から依頼を受けることで受診となります。手術が必要な場合には外科で、それ以外の治療が必要な場合には腫瘍内科での診療となります。がん治療中にも早期からの緩和ケアが必要であり、我々は辛い症状をとる緩和ケアにも精通しています。

各科合同カンファレンス(キャンサーボード・tumor board) にて術前後の治療 (化学療法、放射線療法、ホルモン療法)を外科系各科、内科各専門科、放射線治療科とともに決定します。このカンファレンスは患者さんに最適の医療を提供するためのものですが、同時に各医師の教育の場でもあります。これらの各科合同カンファレンスは消化器外科と内科、呼吸器外科と内科、乳腺科、耳鼻科と口腔外科、泌尿器科ともそれぞれ毎週から隔週の頻度で定期的に施行しています。腫瘍内科医はこれらのカンファレンスにて中心的な役割を果たします。

当科の特筆すべき特徴は、外来診療のトレーニングです。外来通院可能ながん患者さんは外来で化学療法を受けます。また緩和ケアも通院可能であれば外来でフォローします。当院では研修開始と同時に外来研修も始まります。研修開始から1年間は指導医とマンツーマンで行います。研修医が初診を行い、その直後にとなりで外来をしている指導医に相談、一緒に診察室にもどり、指導医と共に患者さんに説明する、というプロセスを全症例において行います。沢山の症例をこなし、次第に慣れ、1年経つころには指導医に必要事項だけ質問したり、少し難しい説明を指導医と一緒にしたりするだけとなり、研修医自ら外来診療ができる様になります。3年経過する頃には今度は1年目の後期研修医の指導ができる医師に成長します。入院診療は指導医との毎日朝の申し送りと重要事項レビューと回診があります。入院患者全例のレビューカンファレンスも毎週と行っています。

上記に加え当科での研修で特筆すべきことには下記もあります。

  • ゲノム医療:がんゲノム医療連携病院として、がんゲノムパネル検査をルーチンで施行し、実臨床に使用しています。当科の特任部長である池田貞勝医師(東京医科歯科大学 がん先端治療部がんゲノム診療科准教授、カリフォルニア大学 サンディエゴ校客員助教)が2018年から当院に着任(非常勤)。がんゲノムに関する診療、教育、研究に精力的に取り組んでいます。当科で研修すると終了時にはがんゲノム医療が自ら実践できるようになります。
  • 米国で活躍する二人の腫瘍内科医{(ダートマス大学 腫瘍内科准教授の白井敬祐先生と、サンアントニオ大学 腫瘍内科教授 Dr. Virginia Kakalamani (部長大山の米国時代の同僚))}に肺がん・メラノーマと免疫療法の症例(白井先生)と、乳がんの症例に関してオンラインで日米を結んだ国際キャンサーボードを行っています。日米双方の視点に基づくエキスパートオピニオンを基に極めてレベルの高い診療の実践を行っています。このキャンサーボードは参加している全てのスタッフの教育の機会でもあります。

当院では他の施設にはない、最高レベルの診療と教育を目指した試みや活動を実践しています。

週間スケジュール

7:00(7:30) 全入院患者
レビューカンファ(1)
呼吸器(毎週)キャンサーボード
泌尿器(隔週)キャンサーボード
頭頸部(毎週)キャンサーボード
乳腺(毎週)キャンサーボード
白井先生
日米カンファ
抄読会・
レクチャー
8:00 申し送りとその日の予定、入院患者・外来新患・問題症例のレビュー 週末当番による全体回診→拘束医へサインアウト
午前 外来・病棟 全体回診 外来・病棟
午後 新患・病棟 全入院患者
レビューカンファ(2)
新患・病棟 病棟
夕方 消化器キャンサーボード

病状説明も指導医と一緒に、患者と家族の心情に配慮し、注意深く行います。初診時の診察と説明には指導医と共に約1時間以上かけ、患者と家族に疾患と治療を理解していただき、信頼関係を築きます。また亀田総合病院では当日にCTや採血は緊急で施行可能です。大まかな病態はそこで判明します。診断が未定で精査が必要な場合、民間病院としての俊敏性を生かして多くの場合、当日~次週までにはほとんどの画像検査、内視鏡検査、生検処置ができます。病理診断もpreliminaryは約48~72時間後に判明します。診療に必要なサポートも例えば下記の様に迅速に克つしっかりしています。
・脊髄圧迫で除圧のオペ適応がある場合:脊椎脊髄科
・脊髄圧迫で緊急照射の必要がある場合:放射線科
・腹部の緊急で外科的処置が必要な場合:消化器外科
・気道閉塞で気道の確保が必要な場合:救急救命センター、集中治療科、麻酔科、耳鼻科、呼吸器外科・内科
・心タンポナーデで心嚢穿刺が必要な場合:循環器科と集中治療科
・頚部リンパ節の生検:耳鼻科・頭頸部外科
・頭頸部癌で胃瘻増設:消化器内科
・胆道系の処置:消化器内科
・尿路の処置:泌尿器科
・がんの骨転移や骨折で手術が必要:整形外科

上記以外にも亀田総合病院の39ある各専門科はそれぞれが優秀な研修制度を持っており、各種緊急事態や重症患者の診療には、24時間体制でコンサルトと必要な処置がなされます。これに関しては私が米国で研修していたときよりも迅速と思います。

日本での腫瘍内科の歴史は比較的浅く、各大学でも講座が出来はじめていますが、元々呼吸器内科や血液科や消化器内科が名称を変更したり、診療範囲を拡大して腫瘍内科となっているところが多いです。時々腫瘍内科として新設された講座をもつ大学もありますが小規模の施設も少なくありません。そのため幅広く全がん種の診療に精通した指導医や、プログラムを修了した医師自体が少ないという問題があります。日本における腫瘍内科のそのような現状の中、亀田総合病院は一線を画す有意義な後期研修を行っております。
亀田総合病院腫瘍内科での卒業生は既に各分野で活躍し、その場も多彩です(亀田総合病院で指導医となった者、大学やがんセンターで研究と更なるキャリアアップをする者、都市部の大病院で腫瘍内科医指導医として働く者、地域の基幹病院で総合内科指導医となった者、地域の緩和ケアクリニックで抗がん剤も使用した積極的な緩和ケア・在宅医療をする者、血液内科に興味をもち、血液内科医になった者)。彼らの研修時代の生の声は下記サイトにありますのでご覧下さい。
https://www.kameda.com/pr/oncology/

新内科専門医制度の開始とともに、当科の研修システムもそれに準拠する形になりました。卒後3年目(後期研修1年目)で入職した場合、亀田総合病院内科系後期研修プログラムの一員として、内科学会規定の研修を行います。腫瘍内科ローテーションは最初の3ヶ月で、そのほかは総合内科専門医受験資格と実力をつけるための内科系各科へのローテーションを行います。卒後4年目(後期研修2年目)には腫瘍内科へもどり、腫瘍内科医としての本格的な後期研修が始まります。1年間は腫瘍内科、次の学年には血液科6ヶ月のローテーションがあり、血液悪性腫瘍の研修も十分に行います。血液内科をそれ以前に経験し、他のローテーションの希望がある場合には変更可能です。各研修医の個別の希望に合わせた研修内容を組みます。亀田総合病院に来て丸4年が終了すると後期研修修了となります。後期研修を修了すると、cellular-oncologist(小さな腫瘍内科医)として完成されます。そのまま亀田総合病院に残ってくださる場合には、主治医権をもつ若いスタッフとなります(米国流にいうとjunior faculty)。そしてさらなる研鑽を積んで経験のある腫瘍内科医、指導医と成長してゆきます。詳しいキャリアパスについては当科のブログ(https://www.kameda.com/pr/oncology/medical-oncology.html)をご覧ください。その他新内科専門医に準拠したストレートの後期研修以外で、別の科や病院で研修を受けていて、途中から当科の腫瘍内科後期研修を開始するする人もいます。たとえば既に一般内科を複数年研修した後や、外科系医師で今後は腫瘍内科医を目指す医師などです。その人たちには基本的に3年間の後期研修プログラムで、各研修医の目的に沿った独自のプログラムを組みフレキシブルに対応します。どのようなパターンでも、基本的な診療能力の習得を目標にプログラムが組まれ、修了時には各研修医が、「一人前の医師として安心」できるような教育行い・経験を積んでもらいます。

プログラム年数

  • 4年(新内科専門医制度の開始とともに腫瘍内科自体の経験期間が短くなるのを補うため、1年延長し4年間としました)
  • 新内科専門医制度以外の、すでにある程度内科系または準ずる研修を受けた医師は3年間(研修医の希望と力に応じて期間を設定します)
  • すでに血液内科の十分な研修経験がある場合は2年も可能

後期研修プログラム概要

後期研修医・フェロー第13期生募集について

亀田総合病院では2006年より腫瘍内科を設立し、日本に先駆けアメリカ式の腫瘍内科トレーニングを提供しています。当科では各科と協力のもと、すべての悪性腫瘍を診療しています。また当院はがん拠点病院であると共に、2008年度から日本臨床腫瘍学会認定研修施設となり、がん薬物療法専門医を輩出してきています。現在スタッフは指導医と研修医を含めて全員で常勤が7名、非常勤が7人います。

当科は希望により適時面接を行います。
希望者は希望日時(月~土)を oyama.yu@kameda.jp までメールしてください。

1.当科の教育目標

  • 世界の最新のデータに基づいた知識を駆使し、がんの種類とステージ、患者さんの状態と希望に応じた科学的に最善の医療と、人間的、社会的側面も重視した全人的医療が施行できるようになること
  • がんの診療だけでなく、患者の全身管理に対する幅広い知識と技術で困難な状況の症例も最大限のがん治療が可能になること
  • 人間として、医師としての人格の育成
  • 自ら生涯学習が可能になるようになる
  • 指導医になれる
  • 明日の医療を形成するのに貢献出来るような人材になる

当科での研修・入職パターンは下記です。

  1. 2年間の初期研修を終了した方を対象とする腫瘍内科後期研修
  2. 既に初期研修医終了後、他の科で研修中、または血液科研修中で、腫瘍内科研修希望する場合
  3. 既に血液悪性腫瘍診療の経験が十分にある方や腫瘍内科専門医取得者はスタッフ医師して採用することも可能ですので、お知らせください。

2.教育項目

  • がん診療の専門的知識と技術の他に、基本的な診療能力を身につけることに重点を置いています。例えば呼吸・循環の管理、輸液・電解質を含む内科一般診療、感染症の治療、緊急事態への対応、他科医師との連携、患者と家族とのコミュニケーション技術などの習得です。がん患者は様々な併存疾患や合併症を起こしやすく、かつ重篤化しやすいです。当科で研修すると一般内科的管理にも習熟します。
  • 積極的ながん治療に加え、症状緩和や看取り、そして在宅診療への橋渡しも学びます。患者さんとご家族の心のケアを含む緩和ケアも我々の大きな仕事の一つです。在宅医療や総合内科の重要性が高まった現在、腫瘍内科の患者さんは、根治される患者さん以外、全員いつかは終末期ケアが必要となります。そこから医師として学ぶことは図りしれません。私自身も長年やってきましたが、いまだに学ぶことが多いです。皆さんがどの領域へ将来進むにしても大変貴重で役立つことです。
  • 人間として、医師としての人格の育成
  • 自ら生涯学習が可能になるようになる
  • 4年間の後期研修プログラム
    • 1年目:腫瘍内科3ヶ月、その他は新内科専門医制度に準拠したローテーションが当院卒後研修センターの管理のもと行います。
    • 2年目:腫瘍内科12ヶ月
    • 3年目:腫瘍内科6ヶ月、血液内科(または希望科)6ヶ月
    • 4年目:腫瘍内科6ヶ月+希望科ローテーション、院外研修など
    • 3年目と4年目は、各研修医の希望によりフレキシブルに構成。半年間チーフレジデントとして全ての新患と入院患者のチェックと下級レジデントへの患者の割り振りとマネージメントをします。2年間の基本的トレーニング終了後に全ての症例を経験するので、腫瘍の専門科としての皆様の将来にとってかけがえのない経験となります。
  • 3~4年終了すると、どのような悪性腫瘍でも対応が可能になります。珍しい状態や見たことがないような状態でも「どのようにアプローチしたらよいか?」がわかるようになり、自ら学習できるようになります。

3.教育方法(learning strategy)

  • 脳腫瘍、頭頚部がん、乳がん、肺がん、消化器がん、泌尿器がん、肉腫、原発不明がん、皮膚がん、婦人科がんなど全ての悪性腫瘍を経験できます。
  • 入院患者数は一度に10人程度を受け持ちます。入院病棟では当科1年目と、2年目または3年目研修医(チーフ)またはスタッフ医師がペアになりマンツーマンの指導。全入院患者のレビューカンファレンスがあり、患者の状態と方針をスタッフと研修医全員の意見を取り入れて決定します。
  • 外来では当科1年目とスタッフ医師がペアになり全症例マンツーマンで指導。外来は週に2回、新患と退院後の治療とフォロー患者を指導医と共に自ら治療医となります。
  • 前述の外科系、内科系各診療科との定期的合同カンファレンス(キャンサーボード)
  • 当院では研修医と全ての医師を対象にした教育講義やカンファレンスが多数あります。それらへの参加は自由です。その他文献の抄読会、各腫瘍、血液疾患にたいする演繹的な講義が定期的にあり、教育の機会は豊富です。

達成することが期待される診療技術

  • 詳細な病歴と診察手技
  • 病態評価
  • 標準的治療
  • 応用問題
  • 全身管理
  • 緩和ケア
  • 長期フォロー
  • 患者、家族への適切な説明
  • 他科医師との連携
  • リスク管理

手技

  • 胸腔ドレーン、腹腔穿刺、胸腔穿刺、中心静脈カテーテル
  • 針生検、骨髄穿刺・生検

学会活動

  • 当科は学会活動も盛んで、様々な臨床研究プロトコールの作成と実施ならびに論文作成に携わります。
  • プロトコール作製と運営
  • 学会発表と論文執筆
  • 所属する学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本血栓止血学会、ASCO、ASH、頭頚部癌学会、脳腫瘍学会、乳癌学会

認定医・専門医

  • 内科認定医
  • 総合内科専門医
  • 日本臨床腫瘍学会専門医(がん薬物療法専門医)
  • 日本血液学会血液専門医(希望者)

4.研修終了後の進路

  • 亀田総合病院に指導医として残る
  • 出身地の病院の指導医として就職
  • 大学・癌センターなどその他
  • がん診療が可能な開業・在宅医

5.プログラムと募集医師の種類と人数

(1)腫瘍内科後期研修医
研修期間:4年
募集人員:4名
応募資格:
1.2年間の初期臨床研修修了者、あるいは
2.内科認定医取得者あるいは同等の経験を有する者
3.新内科専門医制度においては、当院内科後期専門研修終了後から開始。他院で内科後期専門研修終了見込みからの応募も可能
処遇:当院後期研修医の規定に基づく(詳細は募集要項参照)

(2)腫瘍内科フェロー
研修期間:2年
募集人員:2名
応募資格:
1.内科認定医取得者あるいは同等の経験と実力を有する者、且つ
2.血液内科の臨床研修修了者
処遇:当院フェローの規定に基づく

(3)スタッフ
既に血液内科医として十分な経験のある方はスタッフ医としても採用を募集します。
必要条件は個々に判断しますのでご連絡ください。固形癌の経験が少ない方は半年ほどフェローと同様なトレーニングを私とともにして頂く可能性があります。

【最後に】
なかなか言葉では尽くせませんが、私はこれまで聖路加病院、日本の大学病院、アメリカの大学病院と亀田で働いてきました。これまでたどってきた腫瘍内科という専門科が、①担がん患者さんを診療する総合内科であること、②がんではない患者さんや、一般の人々の心配にも答えられる知識と技術を持っていること、③がんという、厳しい診断と治療、終末期までにいたる経過において、とてもダイナミックな体と心の動きが患者さんとご家族とサポートする方々に生じます。そこにアクティブに介入し、ポジティブに影響できるという素晴らしい専門科であるといつも強く感じています。

プログラム責任者

腫瘍内科部長 大山優

1991年  日本大学医学部卒
1991年~1994年 聖路加国際病院内科レジデント
1994年~1996年 日本大学医学部第一内科助手
1996年~1999年 Thomas Jefferson University内科レジデント
1999年~2002年 Northwestern University血液内科・腫瘍内科フェロー
2002年~2006年 Northwestern University助教授
2006年10月~  現職

米国血液科専門医、米国腫瘍内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本がん治療認定医機構暫定教育医